カウンセリングによる治療方法
うつ病患者が日常生活の活動記録をつけて報告する
うつ病治療の方法として、認知行動療法が知られています。認知行動療法は、カウンセリングを通じてうつ病患者が自分の症状を客観的に捉え、不快感の原因となるものを分析しながら治療を進めていく療法です。カウンセリングには、患者の生活記録が欠かせません。日常生活において患者が体験したことや感じたことを詳細に記した記録を基に、カウンセリングが進められます。患者がどんな体験をして、その際にどのように感じたかを記録することにより、患者が自己を客観視することができるのです。この記録は単なる日記ではなく、カウンセラーや心療内科の医師に見せる目的で作成されます。
カウンセラーや医師は、記録を閲覧しながら患者の体験が心理にどんな影響を与えたかを分析し、不快感の原因を探っていくことになります。多くの場合は「自己愛の暴走」と言われるように、自己に固執する傾向が患者を苦しめているケースがほとんどです。この際に、カウンセラーや医師は患者の行動に注文を付けたり意見を述べたりすることはありません。あるがままの姿を注視して患者の心理状態の把握に努めます。もちろん、患者からアドバイスを求められた場合には応えるようにしますが、具体的な指示をすることはありません。あくまでも、患者自身がどのように感じたかを尋ねて、患者が自分の心の傾向に気付くよう導いていきます。
患者が自分の考え方のクセを見抜き修正していく
うつ病患者は生活記録をつけていくうちに、次第に自分の考え方のクセがあることに気付くようになります。記録をつける前は外部からの刺激に対して無意識のうちに反応していたため、自分の心の傾向に気付くことがなかっただけだということを悟ります。多くの場合、うつ病患者は過去のトラウマの影響によって現実の事象を客観的に捉えることができなくなっていると言えるでしょう。過去の苦い経験と類似した事象に遭遇すると、また同じような不快な思いをするのではないかという不安が生じてしまうのです。こうした経験を繰り返すと、過去の不快な経験の記憶が強く印象付けられることになり、ますます委縮してしまいます。
カウンセラーや医師は、患者が自分の考えに固執せず一旦判断を保留してこだわっているものから少し離れてみることを勧めます。不快な事象に対して患者の捉え方以外にも様々な捉え方があることを示し、患者の理解の仕方が絶対ではないことを伝えていきます。特に他人の行動が患者を傷つけることが少なくないのですが、他人の心情をあれこれ詮索することは不毛であり、自分の問題解決につながらないことを理解してもらうよう説諭していきます。多くの患者は考えすぎであり、自分の感情を優先することにとらわれすぎだとも言えるでしょう。こだわりを捨てて自己を解放できるようになれば、うつ病の症状はおさまり快方に向かうことがあります。